コラム
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■No.23 【2019年 3月 1日】 九州経済調査協会『2019年版 九州経済白書』 分担執筆
■No.22 【2015年11月13日】 北九州スタジアムの建設状況に想う (着工から7ヶ月)
■No.21 【2014年 9月18日】 日本計画行政学会論文賞を受賞しました
■No.20 【2014年 3月21日】 「北九州市立大学都市政策研究所 ギラヴァンツ北九州アーカイブ」開設
■No.19 【2014年 2月16日】 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に対する北九州市民、仙台市民等の意識
■No.18 【2013年 5月 5日】 B−1グランプリin北九州の経済波及効果・来場者評価、ギラヴァンツ北九州のスタジアム観戦者調査・市民意識調査
■No.17 【2012年 4月29日】 Jリーグ2012年シーズン開幕直前に実施した、ギラヴァンツに対する市民意識調査
■No.16 【2012年 1月16日】 facebookはじめました
■No.15 【2011年11月15日】 日本都市学会論文賞を受賞しました
■No.14 【2011年 4月 4日】 twitterはじめました
■No.13 【2010年 5月14日】 Jリーグ加盟当初のギラヴァンツ北九州に関する市民意識調査
■No.12 【2009年 9月11日】 北九大 都市政策研究所シンポジウム「スポーツを通じた北九州地域の活性化」
■No.11 【2009年 3月25日】 頑張れ! ニューウェーブ北九州 〜経済効果を試算しました
■No.10 【2008年10月17日】 統計表の”後ろ”
■No. 9 【2008年 8月 2日】 東京と北九州、どっちが暑い?
■No. 8 【2008年 5月28日】 関門地域共同研究 成果報告会の開催
■No. 7 【2008年 5月 1日】 関門連携について考える(その1)
■No. 6 【2008年 2月 1日】 道州制について考える(その2)
■No. 5 【2007年11月 30日】 南九州市誕生
■No. 4 【2007年11月 2日】 北九州市民の通勤地
■No. 3 【2007年10月16日】 北九州からの“日帰り出張”考(その2)
■No. 2 【2007年 9月28日】 北九州からの“日帰り出張”考(その1)
■No. 1 【2007年 9月12日】 道州制について考える(その1)
■No. 0 【2007年 9月 4日】 個人Web Siteの開設にあたって
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九州経済調査協会『2019年版 九州経済白書』 分担執筆
2019年2月、(公財)九州経済調査協会から『2019年版九州経済白書 〜 スポーツの成長産業化と九州経済 〜』が刊行されました。
九州経済白書は1967年に創刊で今年で52回目の出版となり、毎年、旬の地域経済関連項目をテーマにしています。今回のテーマは「スポーツの成長産業化と九州経済」です。
全部で6つの章で構成されており、私は各論第3章「まちづくりにおけるスポーツ施設の意義」を執筆しました。
「スポーツ施設の現状」、「スポーツ施設を巡る多様な論点」、「九州地域におけるスタジアム・アリーナ等の整備動向」について記述しています。
※ 九州経済調査協会「2019年 スポーツの成長産業化と九州経済」
http://www.kerc.or.jp/publish/2019/02/post-570.html
北九州スタジアムの建設状況に想う (着工から7ヶ月)
現在、北九州市小倉北区のJR小倉駅から徒歩10分弱の場所に、日本屈指の「まちなかスタジアム」、そして日本初のPFIによるスタジアム整備事業である「北九州スタジアム」の建設が進んでいます。
私はこれまで、以下のような形でスタジアム建設に関わってきました。
○ 北九州市スポーツ推進審議会 委員(2009年度〜)※ スポーツ振興計画の策定等
○ 新球技場整備アドバイザー会議 アドバイザー(2009年度) ※ 建設候補地・基本方針検討
○ 新スタジアム将来イメージ検討会 会員(2011〜2012年度) ※ 整備方針検討
○ スタジアム整備等PFI事業者検討会 構成員(2013〜2014.7) ※ 事業者選定
○ 北九州市「新スタジアムを考えるシンポジウム」パネリスト(2011年10月)
○ 北九州市「タウンミーティング 新球技場について」市長対談者(2013年8月)
このため、このスタジアムへの想いは強く、また、もとより一市民としても、都市政策の研究者としても、このスタジアムに大いに着目しています。
以下は、先日Facebookに掲載した文章の再掲です。 ※研究の観点からの文章ではありません。
この画像は、2015年11月11日朝の北九州スタジアム建設現場です。
本年4/16の着工から着工から7ヶ月、そして2017年3月の供用開始まで15ヶ月あまり。
メインスタンドは2階部分に着手しており、南北両サイドスタンドの工事も進んでいます。
また、残されていたバックスタンドもサイドスタンドとの接続部分から工事が進んでいます。
写真1 北九州スタジアム建設現場全景(2015年11月11日 南撮影)
写真2 北九州スタジアム・メインエントランス付近(2015年11月11日 南撮影)
写真3 北九州スタジアム・バックスタンド側からの風景(2015年11月11日 南撮影)
図1 (参考)北九州スタジアム完成予想図 (出典:北九州市)
現場を拝見すると、改めて新スタジアムへの期待が高まるとともに、作業にあたる工事関係者の皆様への感謝と、今後の順調な工事の進捗への祈念を心から感じます。
この北九州スタジアムは、ギラヴァンツ北九州だけの利用を想定しているわけではなく、多様な用途での活用が期待されますが、一方で、ここで提供されるメインコンテンツの一つは間違いなくギラヴァンツ北九州の試合となります。
そのギラヴァンツは集客面の課題に引き続き直面しています。私は過去から一貫して、「新スタジアムはギラヴァンツに集客改善の根本的課題解決の機会を提供するものであるが、スタジアムができたからといって課題が自動的に改善されるものではない」こと、そして「北九州の街のにぎわいづくりに寄与するスタジアムでなくては意味がない」ことを述べ続け、書き続けており、現在もそのスタンスに変化はありません。
スタジアムというハードが順調に起ち上がる光景を見ると、嬉しさを感じると共に、クラブあるいは北九州という街のソフト面の状況に対する一種の焦燥を感じる、というのが本音です。
※ 誤解の無いように補足しますが、昨今の応援問題に関することではありません(全く無関係ではありませんが)。このことに関しては別の機会に所見を述べるつもりです。
スタジアムが供用開始となるまでに取り組むべきこと、また、供用開始は意識せず丁寧に時間をかけて取り組むべきことの双方を、地元公立大学の研究者という立場、あるいはギラヴァンツ北九州を応援する一市民という立場で考え、行動していきたいと思います。
日本計画行政学会論文賞を受賞しました
このたび、筆頭著者を務めた論文が日本計画行政学会 論文賞を受賞し、2014年9月12日に一橋大学で開催された全国大会の授賞式で表彰いただきました。受賞論文は以下の論文です。
南博・古藤浩・小林隆史・大澤義明「制度的・地理的隔絶要素に着目した地域間親密度の可視化〜関門地域を事例として〜」、『計画行政』36巻4号、pp.49-57、2013年11月.
学会報告時や論文査読時等において有益なご示唆をいただいた先生方、日頃からお世話になっている皆様、また共著者の先生方に厚く御礼申し上げます。
自身として、学会賞の受賞は2011年日本都市学会論文賞に続き二度目であり、都市全般の諸問題を対象とする都市学会と、行政の計画理論を対象とする計画行政学会から論文賞をいただいたことで、自身の専門分野を問われた際に「都市政策です」と少し自信を持って述べても良いかとも思いますが、まだまだ力量不足であることは自分自身が強く認識しているところですので、今後も地道に研究・教育・地域貢献活動に努めていきたいと考えております。
今回の受賞を励みに、理論と運用の橋渡しとなる研究に引き続き取り組んでまいります。
「北九州市立大学都市政策研究所 ギラヴァンツ北九州アーカイブ」開設
2014年3月17日、「北九州市立大学 都市政策研究所 ギラヴァンツ北九州アーカイブ」を北九大北方キャンパス3号館1階の一角に開設しました。
この機能は、ギラヴァンツ北九州および関連する都市政策に関する出版物・資料等(基本的に印刷物を対象)を体系的に収集・保管し、ギラヴァンツと地域社会が、これまで、そしてこれから築いていく歴史を将来の世代に伝えるとともに、現在の市民にも関心を持っていただくことを目指しています。また、大学に整備する特性を活かし、関連する研究・教育の一層の深化に役立つものにしていきたいと思います。
同日には開設記念シンポジウムを開催し、記念講演として愛媛県立図書館の天野奈緒也様に「愛媛プロスポーツアーカイブズ」での展開を踏まえた北九州への御提言をいただいた後、私がアーカイブの概要説明を行いました。その後の開設式においてはギラヴァンツ北九州の横手社長、北九州市スポーツ振興課の片山様に挨拶を賜り、参加者の皆様にアーカイブをご見学いただきました。
開設にあたり御協力いただいた皆様方に厚く御礼申し上げます。
この機能は、今後十年、二十年と継続していく事によって大きな価値が出てくるものであり、当然のことながら真価が問われるのはこれからです。公立大学に設置された価値ある、個性ある施設となるよう、努めていきたいと存じます。
なお、このアーカイブにつきまして、NHKはじめ報道機関に取り上げていただいたほか、Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」のJ2日記コーナーに記事を掲載いただきました。
■J's GOAL J2日記 「北九州:大学に情報集積拠点オープン」
http://www.jsgoal.jp/special/2014j2/diary/article/00169612.html?type=3&team=473&p=1
■「北九州市立大学都市政策研究所 ギラヴァンツ北九州アーカイブ」の概要
http://www.kitakyu-u.ac.jp/iurps/pdf/activity/140304_1.pdf
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に対する北九州市民、仙台市民等の意識
※ 今回のコラムは、「北九州市立大学都市政策研究所ニュース 2014年1月1日号」へ掲載した拙稿の再掲です。
1.はじめに
(1)研究の背景
2013年の日本における代表的な出来事の一つは、「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定」(2013年9月8日)であったと言えよう。
開催に伴う様々な社会的効果や経済効果への期待・関心も国内全体で高まっているように感じられるが、一方で、開催効果は東京・首都圏に限定されるのではないか等の懸念も聞かれる。開催に伴う各種施設建設やインフラ整備が基本的に東京に偏る中で、他地方に開催効果を波及させることができるかどうかは、国レベルで政策的な取り組みが必要となる。さらに、地方側も国の政策を待ち受けるのではなく、各地方自治体が様々な工夫を行い、地域特性を活かして開催効果を積極的に誘引する取り組みが必要となる。
地方自治体がとり得る政策としては、「外国人観光客の取り込み」、「外国選手団キャンプ誘致」、「地場企業の五輪市場参入支援」などの経済政策や、「トップアスリート育成」、「障害者スポーツへの理解促進」などのスポーツ推進政策など多様に考えられるが、厳しい財政状況の中、オリンピック・パラリンピック開催を「口実」とした効果の見込めない事業への資源の過剰投入には問題がある。また、地方自治体がこれらの政策に取り組むに際しては市民の理解が必要不可欠であり、もとより市民の協力無くしては十分な効果を地域に導出する事業推進は困難である。地方自治体が効果的な取り組みを行うには、市民意識を把握した上で政策を立案・実行していくことが必要となろう。
(2)研究の目的
これらを踏まえ、北九州市立大学都市政策研究所では、2013年度の地域課題研究の一環として「東京オリンピック・パラリンピック開催効果」獲得に向けた北九州市および国内地方都市に求められる都市政策の方向性を考察するための材料を得る事を目的に、国内4都市を対象とした市民意識調査を実施した。
2.市民意識調査の実施概要
調査は2020年大会開催決定直後の2013年9月中旬に実施した。調査実施概要を表1に示す。
なお、インターネット調査は「登録モニターによる回答は、調査対象とすべき母集団(本調査においては一般的な4市市民)の意見を代表していると証明できない」点などが一般的課題として指摘される。本調査においても得られた結果が一般的な各市民の意識傾向と一致することが完全には証明できない。ただし4市間の差異比較等は有効性があるとみなし、相互比較を中心に結果を分析している。
表1 市民意識調査実施概要
3.調査結果の概要
本稿では主たる結果のみ報告する。詳細については2014年3月末に発行予定の本研究所の地域課題研究報告(タイトル未定)を参照されたい。
なお、回答者の基本属性については割愛するが、地域特性を反映した差異は有るものの、分析への影響が懸念されるような顕著な属性の偏りは無い。
(1)東京オリンピック・パラリンピックへの賛否
2020年大会開催への賛否について5段階で質問したところ、「賛成」「どちらかと言えば賛成」の合計は4市とも60%台であり、都市間差はない。より積極的な「賛成」とする意見は江東区が最も多く(46.9%)、開催地としての特色が表れている。
なお、都市間で顕著な差は見られない一方、属性別にみると「スポーツ観戦への嗜好」および「幸福度」は、開催への賛否との間に強い相関がある。
(2)大会開催および準備が日本に与える影響
スポーツや社会経済に関わる30項目を挙げ、それぞれ2020年大会開催が影響するかどうかについて「そう思う」「ややそう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」の5段階で回答を求めたところ、スポーツに関する項目(例:日本全体のスポーツ競技力が向上する)については都市間意識差は小さく、全国で同様の政策が行いやすい可能性がある。一方、地域経済に関する項目(例:自分の住む地域に経済効果がある)、震災復興に関する項目(例:東日本大震災からの復興が進む)については都市間意識差が大きく、政策的配慮が必要である。
なお、2020年大会開催に伴い「自分の住む地域に経済効果がある」ことについて、北九州市・福岡市・仙台市民からの肯定的回答は 22.9〜25.1%にとどまり(江東区は61.9%)、経済効果について東京以外の市民は冷静に受け止めている人が多いと言えよう。
(3)大会に向け居住自治体が力を入れるべき政策
回答者が居住する地方自治体(都県、市区)での取り組みが考えられる14政策(「特になし」を含む。)の選択肢を挙げ、3つまで選択を求めた。各都市の市民意識に特徴が顕れており(図1)、例えば北九州市ではスポーツ振興政策への要望が高く、仙台市では経済産業政策や観光客誘引への要望が高い。北九州市の場合、オリンピックに多くのトップアスリートを輩出してきた歴史が背景にある可能性が考えられ、また仙台市では被災地として震災復興に好影響をもたらす、あるいは悪影響をもたらさない政策への関心が特に高いこと等が背景にあると考えられる。
各都市とも2020年大会開催に向けて幅広い政策に取り組むことへの一定の市民理解はあると言えるが、「特になし」が4都市とも20%前後にのぼる点には留意が必要である。大会関連政策の展開に際しては、必要性、効果等について市民にしっかりと説明し、理解を得ていくことが求められる。
図1 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、居住自治体が力を入れるべき政策 (3つまで選択可)
4.おわりに
東京以外の地方都市においては、自都市への波及効果が期待できる事項や、大会を契機に普及促進を図るべき事項(例:障害者スポーツへの理解促進)は何か、また自都市が日本全体や世界に対し貢献できることは何か、といった点を整理し、現行の総合計画や既存政策と関連づけながら、オリンピック・パラリンピック関連政策を検討することが必要である。行政と市民、企業等が連携し、貴重な国際的一大イベントの開催効果が各地にもたらされるよう、取り組みを進めていくべきだ。
[参考文献]
・ 南博(2013)「東京オリンピック・パラリンピック開催の波及効果獲得に向けた地方都市政策:国内4都市の市民意識調査に基づく基礎的考察」 『日本スポーツマネジメント学会第6回大会号』
B−1グランプリin北九州の経済波及効果・来場者評価、ギラヴァンツ北九州のスタジアム観戦者調査・市民意識調査
2012年度に実施した、B-1グランプリ in 北九州の集客に関する研究およびギラヴァンツ北九州の集客に関する研究の成果概要について、2013年の市民向け研究報告会で報告した資料をPDFで掲載します。
なお、B-1グランプリについては2012年10月の開催日において実施した来場者アンケートを基にしており、ギラヴァンツ北九州のスタジアム観戦者調査については2012年10月(松本山雅戦)に本城陸上競技場で実施したアンケート、ギラヴァンツ北九州に関する市民意識調査については2013年3月に実施したアンケート(インターネット調査)を基にしています。御回答いただいた皆様をはじめ、御協力いただいたたくさんの皆様方に厚く御礼申し上げます。
(PDF) 北九州における“集客”の現状と課題 〜 B-1 グランプリ、ギラヴァンツ北九州 〜
Jリーグ2012年シーズン開幕直前に実施した、ギラヴァンツ北九州に対する市民意識調査
私の研究領域の一つは「スポーツによる地域活性化」。その研究対象である、Jリーグのクラブ「ギラヴァンツ北九州」。私が北九州市立大学に着任した翌年の2008年から研究対象とし、2012年で5年目に入りました。幾つかの観点から研究をしていますが、都市政策の研究者として重視したいことの一つは、「ギラヴァンツに対して市民はどのように感じているのか」という点の把握分析です。ここで言う「市民」は、ギラヴァンツを応援する人々だけでなく、関心の無い人や”嫌い”な人も含んだ人々のことです。地域活性化の効果を考える際や、ギラヴァンツに対する行政支援のあり方等を考えるに際しては、重要なポイントになる部分であると考えています。
ギラヴァンツがJリーグに加盟して初のリーグ戦開幕直前となる2010年2月に北九州市民意識調査を実施し、それから2年を経た2012年の同時期に、改めて調査を実施しました(北九州市立大学都市政策研究所の「地域課題研究」の一環として)。その目的は、ギラヴァンツの2年間のJリーグでの活動を経た市民意識の変化の状況等を把握し、ギラヴァンツに係る各種取り組み等を検討する際の基礎的情報を得ることです。
その結果について2012年3月にとりまとめ、4月24日の研究所「研究報告会」で報告しました。その前後に複数のマスコミによる報道もいただきました。
明らかとなった主要な点としては、
■ Jリーグにおける2年間の活動により、ギラヴァンツ北九州への市民の関心は大きく高まってはいるものの、スタジアムでの観戦にはまだ十分結びついていない。 ただし「きっかけがあれば観戦したい」という意欲をもつ市民は大きく増えている(これまで観戦経験の無い市民も含め。)。
■ ギラヴァンツ北九州が地域に好影響を与えると考える市民が大半を占めている。
が挙げられます。
研究会の報告資料は、右のリンク先のPDFにお示しします。 → リンク(PDF)
※2010年の調査結果については、本コラムのNo.13参照
なお、本調査については、インターネット調査により実施しています。学術研究におけるインターネット調査の有意性を巡っては様々な議論があり、品質を疑問視する意見も強くあります。代表的な課題として、インターネットを利用するという制約から、高齢者や、パソコン等の利用が容易ではない市民からの回答は少なくなる点や、それらに起因し「登録されたモニターの回答は、調査対象とすべき母集団(本調査においては一般的な北九州市民)の意見を代表していると証明できない」点などが指摘されています。
しかしながら、住民基本台帳等からの無作為抽出による調査は実施に際して個人情報保護の観点等から様々な課題があります。
これらの点を総合的に勘案し、得られた結果が必ずしも一般的な北九州市民の意見の傾向と一致することが証明されるものではない点に十分留意したうえで、インターネット調査を用いることとしました。
ただし、本調査で得られた属性間の回答傾向の比較については、登録モニターという同一の集団の回答に対する分析になるため有効性が高いものと考えます。従って、居住する行政区や年齢・性別等の属性別の比較や、2010年と2012年の経年比較を中心に分析しています。
facebookはじめました
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)には様々な課題も指摘されていますが、地域社会や地域経済に与える影響は大きなものとなってきています。都市政策へのSNSの有効活用を考察するためには自身が活用してみることが必要であると考え、2011年4月からtwitterを始めました。そして2011年12月から、同じく世界的に利用されているfacebookに登録し、徐々に使用を進めています。
特性の異なる両サービスですが、いずれも使ってみると、多くの人々から様々な情報を得ることができたり便利な利用法があることに気付いたりする一方、いくつかの課題(特に公的な団体等が使用するに際して)にも気付き始めています。
今後も利用を進め、都市政策の推進に際しての有効活用方策を考察するとともに、人的ネットワークづくりにも活用していきたいと考えています。
※ facebookには「南 博」で登録しています。同姓同名の方が8名ほど登録しておられる点をご留意ください。
※追記 URLはこちら → http://facebook.com/minami.hiroshi
日本都市学会論文賞を受賞しました
このたび、日本都市学会論文賞を受賞し、2011年11月に福島市で開催された日本都市学会第58回大会において表彰いただきました。
受賞論文は2009年に日本都市学会年報で公表した、以下の論文です。
南博 「地域活性化の観点から見た自治体事務の外部委託化・協働化提案制度」、
日本都市学会 『日本都市学会年報』 Vol.42、 pp.23-32、 2009年5月
表彰式における、私の挨拶を掲載いたします。
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このたびは名誉ある日本都市学会論文賞をいただき、大変光栄に存じます。審査の労をお執りいただいた先生方、また日頃からご指導いただいております九州都市学会の先生方をはじめ、関係の皆様に厚く御礼申し上げます。
受賞論文は、自治体事務の外部委託化・協働化提案制度という、「新しい公共」の推進にあたって一つの鍵になると私が考えております制度について、敢えて地域経済の観点から論じたものです。
今回の受賞を大きな励みとして、地域社会の発展と地域経済の発展が両立できるような政策研究に、引き続き取り組んでいきたいと考えております。
この度は誠にありがとうございました。
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挨拶で述べているとおり、大変光栄であり、また今後に向けた励みとなりました。研究に際し様々な形でご協力いただいた方々に厚く御礼申し上げます。
twitterはじめました
地域活性化、新たな地方自治の姿、地域の危機管理などについて学ぶ中、twitterの持つ可能性(プラス、マイナス両面)に関心を持っていましたが、自分自身は取り組んでいませんでした。
自治体危機管理学会の学会誌『自治体危機管理研究』第7号に寄稿した「インターネットによる自治体の情報受発信と住民意識−2010年度における宮崎県の3つの連続災害を事例として−」においても、口蹄疫等の際のtwitterによる情報受発信について若干の論考を行っており、災害時における今後の発展可能性への期待も感じていました。 ※当該学会誌については現段階で未発行
その寄稿を脱稿した直後、2011年3月11日、東日本大震災が発生し、現在もまだ関連被害が拡がりつつあります。この大震災は、言うまでもなく大変衝撃的でした。まだ私自身は情報収集を進め断片的な考察を場当たり的に行っている状態であるため、機会を改めてまとめて思うところを述べたいと思いますが、その大震災下においてもtwitterの功罪が話題となっています。人々のつながり、情報の重要さを感じながら都市政策を学ぶものとして、是非自分がそのコミュニティの中に入り、活用してみようとの思いを新たにしました。
そこで、新年度になったことを機会に、2011年4月1日から、twitterを始めました。
@minami1969
まだ機能を十分理解しておらず、利活用には程遠い形の恐る恐るのスタートですが、既に色々な長所・課題を感じつつあります。自らの研究、教育、社会貢献等の充実に生かすことを目的に、続けていきたいと思います。
なお、本サイトのコラムについても、引き続き残し、情報発信したいと思います。と言いつつも、ほぼ1年間、更新しませんでした。反省しています。twitterとは異なる形でのまとまった情報発信の場として、更新していきたいと思います。
Jリーグ加盟当初のギラヴァンツ北九州に関する市民意識調査
今年(2010年)からJリーグに加盟したギラヴァンツ北九州。その開幕直前である2月末〜3月始めにかけて、北九州市民がギラヴァンツ北九州に対しどのような意識を持っているのか、アンケート調査を実施しました。
詳細は、以下のペーパーにまとめ、公表しています。
南博、神山和久、片岡寛之 「Jリーグ加盟当初のギラヴァンツ北九州に関する市民意識分析」 北九州市立大学都市政策研究所『スポーツを通じた地域活性化に関する基礎的研究』pp.37-48、2010年3月 ※PDFファイル
本コラムでは、このうち主立った結果を抜粋してご紹介します。
■調査概要
目的 |
ギラヴァンツ北九州に関心がある市民だけでなく、今は関心のない人々も含めた幅広い市民から、クラブに対する意見を把握する。 |
調査方法 |
インターネット調査 |
調査対象 |
北九州市に居住する18歳以上の市民のうち、(株)インテージが管理・利用する調査モニターへ登録している市民 |
実施期間 |
2010年2月26日(金)〜3月2日(火) |
有効回答数 |
2,486 |
注: インターネット調査には、「登録されたモニターの回答は、調査対象とすべき母集団(本調査においては一般的な北九州市民)の意見を代表していると証明できない」等の課題があります。従って、本調査結果をご覧いただくにあたっては、得られた結果が必ずしも一般的な北九州市民の意見の傾向と一致することが統計学的に証明されるものではない点に十分ご留意ください。
■チームの認知度
Q あなたは、「ギラヴァンツ北九州」、またその前身の「ニューウェーブ北九州」というサッカーチームを知っていましたか。(回答は1つ) |
2010年からのチーム名である「ギラヴァンツ北九州」と、2001〜2009年に使用していたチーム名「ニューウェーブ北九州」それぞれについて認知度を尋ねたところ、双方のチーム名とも知っているとする市民が過半数を占めています。しかし、どちらも知らない市民、あるいは以前のチーム名のみ知っている市民も30%以上おり、必ずしもチーム名が十分浸透しているとは言えない状況です。
■試合観戦経験 (ニューウェーブ時代)
Q あなたは、「ニューウェーブ北九州」(ギラヴァンツ北九州の前身)の試合を観戦したことがありますか。当てはまるものを全てお答えください。(回答はいくつでも) |
これまでのニューウェーブ北九州(活動期間10年間)の試合を観戦した経験について尋ねたところ、実際にスタジアムまで行って観戦したことがある市民は9%程度、テレビで観戦したことがある人は14%程度(複数回答可)であり、80%程度は全く観戦したことがありませんでした。
行政区別に見ると、北九州市立本城陸上競技場に近い八幡西区、若松区においてスタジアムで観戦経験がある市民が比較的多く、スタジアムから比較的遠い門司区、小倉南区においてはスタジアム観戦経験のある市民は少ない結果となりました。
また、グラフは省略しますが、年齢別・男女別に見ると、スタジアムでの観戦経験は30歳代、40歳代がやや高く、また男性の方が高い傾向が見られました。
■スタジアム観戦回数 (ニューウェーブ時代)
Q (「スタジアムで観戦したことがある」と回答した人(232人)に対し) そのおおよその回数についてお答えください。 |
半数弱が1回のみでした。
■スタジアムで最初に観戦したきっかけ
Q (「スタジアムで観戦したことがある」と回答した人(232人)に対し) あなたが、スタジアムで最初に観戦した動機・きっかけについて、主なものを2つまでお答えください。(回答は2つまで) |
回答は4つの選択肢に集まり、最も多かったのは「試合のチケットをもらったから」(40.1%)、次いで「ニューウェーブ北九州(当時)に関心があったから」(37.5%)、「サッカー観戦が好きだから」(32.8%)、「友人や家族に誘われたから」(28.9%)となっています。スタジアムを訪れるきっかけとして、後援会等を通じてチケットが広く配布されたことについて、入場者数確保という観点からは、これまでは有効であったと言えるでしょう。
このことが再度スタジアムでの観戦に結びついているか等を把握するため、「観戦回数」と「最初の観戦のきっかけ」についてクロス集計を行うと、例えば6〜10回観戦している回答者の28.6%は、最初のきっかけが「試合のチケットをもらったから」と回答しています。当初は関心が薄い状態で、試合のチケットをもらったり友人・家族に誘われたりして、「受け身」の状態で初めてスタジアムで観戦した人の中からも、熱心なサポーターが生まれてきていることが推測できます。
■今後のギラヴァンツへの関心
Q あなたは、今後の「ギラヴァンツ北九州」の活動に関心がありますか。お気持ちに当てはまるものをお答えください。(回答は1つ) |
全体でみると、「関心がある」「やや関心がある」とする市民と、「あまり関心がない」「関心がない」とする市民がおおむね半数ずつでした。
このうち、「あまり関心がない」「関心がない」とする理由を自由記入してもらった内容を整理すると、「そもそもスポーツ、あるいはサッカーに関心がない」とする回答者が多いのですが、「今はまだ弱いから」、あるいは「知っている選手(有名選手等)がいないから」という回答や、「関心がないが地元なので頑張って欲しい」とする回答等も見られ、こうした回答者については、今後のギラヴァンツ北九州の活躍次第でもっと関心をもってもらうことができる余地が大きいものと考えられます。
一方、回答の中には、実際にスタジアムで観戦した体験を踏まえた上で、チーム経営や試合会場の問題などを挙げたものも散見されます。また、地域に密着していないとの批判的意見もわずかながら見られます。こうした不満を抱える市民を少しでも減らすような取り組みを進め、さらに関心のない層に関心をもってもらうことが必要です。
■ギラヴァンツ北九州が地域に与える影響
Q あなたは、「ギラヴァンツ北九州」がJリーグに加盟し、今後活躍していった場合、北九州市にとってどのような影響があると思いますか。それぞれお気持ちに当てはまるものをお答えください。 |
ギラヴァンツ北九州の今後のJリーグでの活躍が、北九州に様々なプラス面の効果を与えると多くの市民がイメージしている結果となりました。中でも「子ども達に夢を与える」について期待度が高く、こうした期待を裏切らないような取り組みが、ギラヴァンツ北九州及びそれを支える地域の各主体に求められていると言えます。
なお、ギラヴァンツ北九州は、クラブアイデンティティとして「プロスポーツリーグでの活躍を通じて地域に誇りと活力を!子どもたちに夢と感動を!」を掲げていますが、これは市民の期待に合致していると言えるでしょう。
■今後のスタジアム観戦への意向
Q あなたは、今後「ギラヴァンツ北九州」の試合をスタジアムで観戦することについて、どのようにお考えですか。お気持ちに当てはまるものをお答えください。(回答は1つ) |
地域活性化の観点からは最も気になる設問です。
「ぜひ観戦したい」とする回答は11.9%に止まったものの、「きっかけがあれば観戦するかもしれない」とする回答が45.3%となっており、この双方を合わせると過半数の回答者が、強弱はあれども観戦する意欲を示しています。年齢別・男女別に見ても、若い世代や女性においても過半数が観戦意欲を示しています。
これまでの観戦経験別にみると、これまで観戦したことがない回答者の半数近くは「ぜひ観戦したい」「きっかけがあれば観戦するかもしれない」と回答しており、今後、サポーターとなる可能性のある市民が相当数存在すると言えるでしょう。
こうした市民に「きっかけ」を提供していく努力が必要です。
■市民がもっとギラヴァンツを応援したくなるために必要な点
Q 市民の皆さんが「ギラヴァンツ北九州」をもっと応援したくなるために必要だと思う点を、あなたが重要だと考えるものから3つ順番にお答えください。 |
「チームが強くなること」が突出して多くなっています。次いで「試合や選手の情報がもっと広報されること」「チームに地元出身の選手が増えること」「子どもへのサッカー指導やボランティア活動など、選手・スタッフが地域貢献活動をもっと行うこと」が多くなっており、チーム編成、広報、地域貢献活動という、ギラヴァンツ北九州の現場とフロント双方による総合力の強化が重視される結果になっています。
この設問について、これまでスタジアム観戦したことがある人と、観戦したことがない人に分けて結果を見ると、目立った違いとしては、スタジアムで観戦したことがある人は、「本城陸上競技場への交通アクセスをより良くすること」及び「観戦しやすいスタジアムを新たに整備すること」について30%前後の回答者が選んでいる点が挙げられます。当然の事ながら、交通アクセス及びスタジアムの問題については、実際に観戦に訪れた市民でなくては分からない面が多いためでしょう。今後の集客戦略を考えた場合、こうした点で観戦者の不満が高ければ、せっかく一度スタジアムを訪れても、リピーターとならない可能性も高いと考えられるため、観戦環境の改善に向けた対応が必要と言えます。
なお、アンケートでは、それぞれ最も重要と思う項目について、具体的な提案・改善策も回答いただきました。いただいた多くの貴重なアイデアについてはギラヴァンツ北九州、およびギラヴァンツ北九州を支える地域の関係機関等に提供し、今後の活動戦略の検討に役立てていただくこととしています。
※ ※ ※
以上が主な結果の概要です。本結果については、市民意識の現状や、従来から指摘されている問題点をアンケートによって裏付けたという点では意義があったものと考えます。しかしながら、地域活性化の観点から、ギラヴァンツ北九州への市民の関心を高める具体的方策について体系的な提案を行うには至っておらず、本研究で得た知見に加え、事例研究等を通じ、さらに検討を行っていく必要があると考えています。
北九州市立大学 都市政策研究所シンポジウム「スポーツを通じた北九州地域の活性化」
この度、北九州市立大学都市政策研究所では、「スポーツを通じた北九州地域の活性化」をテーマに、市民の皆さん(北九州市外にお住まいの方も含む)や、様々な機関の方等を対象としたシンポジウムを開催いたします。
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【シンポジウム概要】 1.シンポジウム開催の趣旨
スポーツは地域に様々な効果をもたらすことが期待され、今後の北九州地域の活性化に際し、重要な要素となることが考えられる。そこで、現在、北九州市をホームタウンに活動し、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)加盟を目指している「ニューウェーブ北九州」等を事例とし、地域にスポーツチーム(サッカー以外の各種スポーツも対象)があることの有用性、あるいはスポーツと地域の関わりのあるべき姿について論じることを目的とする。
2.シンポジウムのテーマ
スポーツを通じた北九州地域の活性化
3.主催等
主催: 北九州市立大学 都市政策研究所
共催: 北九州市
後援: 北九州商工会議所、九州経済連合会、北九州サッカー協会、(株)ニューウェーブ北九州、NHK北九州放送局
4.開催日
2009年10月18日(日) 13:00〜16:30
5.会場
北九州国際会議場 メインホール(客席534席) (北九州市小倉北区浅野三丁目9番30号)
6.対象
市内外にお住まいの方々どなたでも(参加費無料)
7.プログラム(案)
13:00〜13:10 開会、主催者等あいさつ
13:10〜14:10 基調講演 (60分)
「地域活性化とスポーツ」
池田 弘 氏 (株)アルビレックス新潟会長、NSGグループ代表
14:10〜14:25 北九州市立大学生における関連研究・活動報告 (15分)
「Jリーグチームと大学の連携に関する研究」 学生グループ”NavyWavy”
14:25〜14:40 休憩
14:40〜16:15 パネルディスカッション「スポーツを通じた北九州地域の活性化」 (95分)
パネリスト(五十音順):
・小松 真 氏 北九州市企画文化局 文化スポーツ部長
・中村 眞人 氏 北九州商工会議所副会頭、ニューウェーブ北九州後援会会長
・傍士 銑太 氏 Jリーグ理事、(財)日本経済研究所 専務理事
・真鍋 和博 北九州市立大学地域創生学群 准教授
・山木戸 祥子 氏 ニューウェーブ北九州 市民ボランティア
・横手 敏夫 氏 (株)ニューウェーブ北九州 代表取締役社長
コーディネータ:
・南 博 北九州市立大学都市政策研究所 准教授
16:15〜16:25 フロアとの質疑応答
16:25〜16:30 主催者等あいさつ、閉会
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北九州地域の社会・経済の活性化に向けた一つの大きな可能性と成りうる「スポーツ」について、市民の皆さんと共に考え、行動しようとの思いから企画したシンポジウムであり、今年4月から案を練って多くの関係者の方々の多大なる御理解・御協力のもとに「参加者募集」の段階に至りました。
基調講演者としてお招きするサッカーJ1リーグのアルビレックス新潟の池田会長から「新潟の奇跡」とも形容された新潟発の新たなスポーツ文化・ビジネス創成のお話をうかがえること、またパネルディスカッションにおいてはサッカーJリーグへの加盟を目指すニューウェーブ北九州を支える、市民、経済界の各お立場からのお話や、Jリーグ「百年構想」の推進にあたっておられる傍士Jリーグ理事のお話をうかがえること、あるいは北九州市のスポーツ振興全般に係る行政のお立場としての話をうかがえることは、主催者としても一個人としても、とても楽しみです。
今後、市内各所で本シンポジウムの告知、参加者募集を行わせていただきます。
参加のお申し込み・お問い合わせは、このチラシ(PDF)(※10/5 申込締切を延長)をご覧のうえ、電子メール(アドレスはチラシ内に記載)等でお願いいたします。
多く方々にご参加いただけますと幸いです。何とぞ、よろしくお願い申し上げます。
頑張れ! ニューウェーブ北九州 〜経済効果を試算しました
ニューウェーブ北九州(NW北九州)は、北九州市を本拠地として活動しているサッカーチームであり、2010年のJリーグ(日本プロサッカーリーグ)加盟を目指して現在JFL(日本フットボールリーグ)で戦っています。
JFLの2009年リーグは3月16日に開幕し、NW北九州は本拠地・北九州で9,856人もの観客の前で引き分けて勝ち点1を獲得、続く3月22日の第2戦では今季初勝利を挙げ勝ち点3を獲得し、Jリーグに向け順調なスタートをきっています。
Jリーグ加盟のためには厳しい要件が課せられており、準加盟(NW北九州は2008年に資格獲得)した後、JFLでの年間順位4位以内、1試合平均観客数3,000人以上、ホームスタジアムの整備(イス席10,000席以上など)、及び運営体制全般の整備などが必要となります。
NW北九州は、2008年は準加盟の資格を有していましたが、JFL年間順位10位、1試合平均観客数1,149人、ホームスタジアムも未整備という状況で、加盟要件は満たしませんでした(資格を満たした栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山は2009年からJリーグ加盟)。
なお、運営体制については、これまでのNPO法人から2008年10月には株式会社へと移行するなど強化が図られています。
目下の所の最大の課題は、年間順位4位以内、1試合平均観客数の3倍超増(昨年比)と言えるでしょう。
さて、2008年度の北九州市立大学都市政策研究所の「地域課題研究」として、私は「プロサッカーチームが北九州市に与える経済効果に関する研究」を行いました。
◆2009年4月21日 加筆
・「プロサッカーチームが北九州市に与える経済効果に関する研究」
北九州市立大学都市政策研究所『地域課題研究 2008』、pp.187-210、2009年3月
※論文(一部修正版)(PDF)
この研究は、プロサッカーチーム(ニューウェーブ北九州)が地域にもたらす様々な効果の一部である経済効果(経済波及効果)に着目し、北九州市産業連関表を用いて、NW北九州がJリーグに加盟した場合に想定される経済効果額を試算したものです。
この種の経済効果額の試算は、大まかな仮定のもとに算出されるものであり、また経済効果の概念には様々な誤解も生じやすいと考えられるため、その取扱には十分な注意が必要という前提のもと、NW北九州の1年間の活動によって北九州市内にもたらされる経済効果を以下のように試算しました。
・J2新規参入直後の段階: 約9億円
・J2に定着した段階: 約13億円
・J1に昇格した段階: 約20億円
(いずれもスタジアム整備に係る経済効果は含まず)
NW北九州は、一定程度の大きな経済効果を北九州市にもたらすと言えるのではないでしょうか。
この推計結果は、他のJリーグのチームの経済効果推計と比較してもおおむね妥当な値と考えています。
なお、経済効果の項目の内訳を見ると、中心となるのは「試合における観客消費」になります。この推計では、NW北九州のホームゲームでの観客数を「J2新規参入直後の段階」は1試合平均5,000人、「J2に定着した段階」では同じく8,000人、「J1に昇格した段階」では同じく15,000人と設定しています。この人数は現在のJリーグの各チームの観客数の状況から見ると平均的な水準ですが、NW北九州にとっては低いハードルではありません。観客数が確保できない場合、ここで推計した経済効果より大きく下回る効果額となってしまいます。
また、そもそも前述のようにJリーグ加盟に際しては1試合平均3,000人の観客数の確保が必要不可欠です。そのためには、NW北九州が良い成績を上げ市民の関心を引き寄せることが何より重要でしょうが、市民側もNW北九州が地域に多様な効果をもたらす存在である点を認識し、一人ひとりが無理のない範囲で息長くチームを育てていくという視点を持つことが必要でしょう。そして、一人でも多くの市民が北九州で開催されるホームゲームにおいてスタジアムを実際に訪れるような地域の機運が醸成されるならば、NW北九州のJリーグ加盟が実現し、そして経済効果も大きなものとなっていくことでしょう。
こうした点から見ると、開幕日に1万人近い観客が本拠地・北九州市立本城陸上競技場を訪れた意義は大きく、また個人的に密かに感動しておりました。
今年のNW北九州の更なる活躍と、それが北九州市の活性化につながっていくことを期待したいと思います。
頑張れ! ニューウェーブ北九州!
※参考
ニューウェーブ北九州 Webサイト
http://newwave-k.co.jp/
※なお、スタジアムの整備を巡っては、今後、北九州市において様々な議論が行われることになると思います。この点については施設の利便性に加えて、市の財政面への影響、あるいは北九州市内の地域別の活性化のあり方、また経済効果等の観点も重視し、冷静に検討していく必要があると思います。
統計表の”後ろ”
この秋から、ある地域の人口推計に係る研究にアドバイザーとして関わることになりました。
人口推計作業は、シンクタンク在職時代にいくつもの地域で行ってきており、今回も適切な推計となるよう支援を行っていきたいと考えています。
さて先日、推計に向けたウォーミングアップを始めて、ふと何とも言えない思いがよぎりました。
人口推計(私がよく用いるのはコーホート要因法)では、自然増減(出生・死亡)と社会増減(転入・転出)を考えていくことになるわけですが、これまで私は、自然増減はごく“機械的に処理”し、社会増減の部分に時間と思いをかけて検討を行ってきました。
今回もこうした発想で、まず自然増減の推計のために県の保健福祉部局がまとめた人口動態調査の統計表(出生や死亡に関するデータが保健所・市町村別にある程度細かく掲載されています。)を何気なく眺め始めたのですが…、そこで思いがよぎったのです。
全く個人的なことですが、今年5月には義父を病気で亡くしました。一方で8月には次女が誕生し元気に育っています。この死亡・出生は来年度以降にまとめられる各自治体の人口動態の統計表を構成する要素になります。
当たり前のことではあるのですが、統計表に記された数字一つひとつの後ろには、「人生」とそれにまつわる人々の色々な思いがあるのだな…、と。
もちろん、自然増減の推計作業にはこうした事や私の感情は一切関係しません。統計的な処理を淡々と行っていくのみです。
しかし、使用する数字にはそれぞれの「人生」が集約されている、ということは頭の片隅に留めておくべきだな、と思いました。 ※このことは今から10年以上前に関わったある研究でも感じたのですが、いつの間にかその感覚を忘れてしまっていました。
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この秋には、私が現在の主な研究テーマとしている「道州制」「大都市制度改革」に関しても様々な動きが見られており、また今後も動いていくことが予想されます。
しっかりと情報を集め、考察を巡らせ、論文や講演等で情報を発信していきたいと思います。
東京と北九州、どっちが暑い?
夏本番を迎え、北九州でも暑い日々が続いています。
さて、「東京から引っ越してきました(引っ越しました)」という話を北九州や東京の方々にすると、しばしば「九州は東京より暑いでしょう?」あるいは「海が近いから結構涼しいですよね?」と尋ねられることがあります。
東京から引っ越して2度目の夏を迎えていますが、個人的な体感では「あまり違いはないけれども、東京の方が暑い」という印象を持っていました。しかし、妻の方は「九州の方が暑い」と言っています。
それでは、実際の気温はどうなのでしょうか。
現在、気象庁Webサイトの「気象統計情報」では多くの情報を取得することが可能です。このデータを利用させていただき、まず、昨年(2007年)から今年7月の「1日の最高気温の1ヶ月平均」の月別データを整理してみました(このコラムのテーマは「暑さ」なので、平均気温ではなく平均最高気温を用いました)。比較は、東京、北九州の2都市に、大阪も加えて計3都市で行いました。ちなみに東京都区部の観測場所は千代田区大手町としました。これは私のかつての勤務地のすぐそばですので、「経験値」に近い気温と考えます。北九州市では、主たる活動拠点の小倉北区あるいは小倉南区のデータが取得できないため、観測地点のある八幡西区のデータを用いました。大阪市は中央区のデータを用いました。
比較した結果は図1です。
図1
出典:気象庁Webサイト「気象統計情報」ページ掲載データをもとに筆者作成
北九州と東京を比較すると、「ほぼ同程度で、月によっては北九州の方がやや高い」と読み取ることができようか思います。大阪市は、春から秋にかけて東京、北九州よりかなり暑い傾向にあると言えるのではないでしょうか。
※ちなみに、「暑さの実感」に影響を与えるであろう”湿度”については北九州市の詳細データが得られませんでした。
では、長期間の経年変化を見るとどうでしょうか。
同じく、気象庁Webサイト「気象統計情報」を見てみました。残念ながら北九州市には過去古く遡ったデータがないため、福岡市のデータを代替して用いました。ちなみに表1で用いたデータで北九州市と福岡市を比較すると、福岡市の方が北九州市より若干「暑い」傾向にあります。
ここでも、敢えて「暑さ」にこだわるため、「1890年以降の8月における1日の最高気温の平均」を比較してみました(図2)。
図2
出典:気象庁Webサイト「気象統計情報」ページ掲載データをもとに筆者作成
過去100年以上の推移を見ると、まず目につくのは、「3都市とも、8月の平均最高気温が近年高くなりつつあるのではないか」ということでしょう。地球温暖化、ヒートアイランド現象などの影響がその要因として考えられるのでしょう。それから、3都市を比較すると、大阪が最も暑く、次いで福岡、東京の順である、という傾向もうかがい知ることができます。
これらのデータを見ると、「北九州と東京の暑さはあまり違わないよ。だけど、北九州の方が少し暑いかな」と(雑談レベルでは)言ってよいのかもしれません。
ただ、上記データは気象台・アメダス観測地点などで「決められた方法できちんと観測されたもの」であり、実際に東京で働いていると、ビル群やアスファルトからの日光の照り返し等のある中、人混みを移動するという経験をすることが多い一方、北九州では緑の中、比較的低密度な建物の中を移動することが多いのではないでしょうか。
こうしたことから、私も冒頭で述べたように「東京の方が暑い」という印象を持ったのかもしれません。
※もちろん体感温度には、その他様々な要因が影響しているものと思われます。
このコラムでの記述は学術的な検討等を踏まえたものではありませんので、単なる個人的な印象論としてお読み
ください。
それにしても地球温暖化問題は気になります。その原因等についても諸説あるようですので非専門の立場として軽々に論じることはできませんが、その抑制のためには、一人ひとりのアクションの重要性も無視できないものでしょう。
とは言うものの、例えば私は10年間、ハイブリッド自動車(プリウス)を自家用車としていたのですが、先月、非ハイブリッド自動車に買い換えるという「非エコ」と言えるような消費行動をとっています。同じ距離を走行する際、より多くのガソリンが必要で、CO2の排出も多くなると思われます。そこで、その分、日常生活上の何らかの行動でCO2の排出を抑制するようなことを考え、実践したいと思っています(自己完結型排出権取引?)。
次の世代、またその先の世代へ、少しでもよい自然環境、そして社会を残したいものです。
関門地域共同研究 成果報告会の開催
コラムNo.7で触れた 「関門地域共同研究会 成果報告会」 について、プログラム等が決まりましたのでお知らせします。
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■テーマ 『関門特別市』に関する基礎的研究 〜今後の地方分権改革後の関門地域への展望
■日 時 2008(平成20)年6月26日(木) 13:30〜16:15
■場 所 海峡メッセ下関 8階 801大会議室 山口県下関市豊前田町3−3−1
■プログラム
1 開会 (13:30)
あいさつ 道盛 誠一(下関市立大学附属地域共創センター センター長)
2 研究成果報告 (13:40〜15:00) ※それぞれ発表15分・質疑5分
(1) 道州制を巡る議論の変遷と今後の論点
南 博 (北九州市立大学都市政策研究所 准教授)
(2) わが国における大都市制度の改革とその課題−普遍主義バイアスをめぐって
森 裕亮 (北九州市立大学法学部 准教授)
(3) 関門大都市圏における最近の地域構造の変化と行政境界
吉津 直樹 (下関市立大学経済学部 教授)
(4) 道州制導入及び特別市移行等が関門地域に与える影響に係る基礎的考察
南 博 (前出)
休憩 (15:00〜15:15)
3 特別講演 (15:15〜15:35)
(仮題)「新たな大都市制度創設の提案 〜横浜市大都市制度検討委員会 中間報告について」
橘田 誠 氏
(横浜市都市経営局 経営企画調整部 調査・広域行政課 大都市制度担当課長)
4 ディスカッション 「特別市構想の今後の方向性」 (15:35〜16:10)
コーディネータ: 南 博
パネリスト: 橘田 誠 氏、 吉津 直樹、 森 裕亮 ※いずれも所属は前出
5 閉会 (〜16:15)
あいさつ 晴山 英夫(北九州市立大学都市政策研究所 所長)
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私は、研究報告(2論文)ならびにディスカッションのコーディネータを務めます。
今回の成果報告会では、特別講演として、横浜市の橘田・大都市制度担当課長をお招きし、横浜市の設置している「横浜市大都市制度検討委員会」が今年3月に公表した中間報告について、事務局のお立場から解説いただきます。
この「横浜市大都市制度検討委員会」中間報告は、新しい時代の大都市にふさわしい新たな自治制度の創設等について提言を行っており、「基礎自治体と広域自治体に加え、“大都市自治体”の枠組みをつくる」こと、「大都市は広域自治体の区域から独立し、自立的・効率的に大都市を経営」すること等の考え方が示されています。
これは、我が国における今後の指定都市制度、大都市制度の改革に向けた大きなインパクトになるものであると考えられ、今後の取り組みが注目されています。
※横浜市大都市制度検討委員会のWebサイト
http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/chousakouiki/bunken/
もちろん、横浜市と関門地域では地域特性等が大きく異なりますので、それぞれの地域においてイメージする将来の大都市制度像が完全に一致するものとは限りませんが、日本各地においてこうした大都市制度改革について具体的提言等が湧き起こることは、地方分権の自立的な推進に大きく貢献するものと考えます。
こうした点も踏まえ、地域の皆様方に、関門地域共同研究における北九州市立大学・下関市立大学の研究成果とともに、横浜市の検討委員会の提言内容をお聞きいただき、地方分権時代における関門地域のあり方に関する議論を皆様方が行っていただく際の一つの参考としていただければと考えています。
参加ご希望の方は、参加申込書(PDFファイルへリンク)をお使いいただき、下関市立大学附属地域共創センターまで送付してください(6/19締切)。
※送付先、お問い合わせ先等につきましては、上のPDFファイル内に記載しています。
当日、多くの方々にご来場いただけますと幸いです。
関門連携について考える(その1) 〜 関門地域共同研究会
様々な歴史の舞台にもなった陸上・海上交通の要衝“関門海峡”を挟んで向かい合う北九州市と下関市は、「関門地域」として全国的にも広く認知されていると思います。
私が北九州に移ってきてからちょうど1年経過しましたが、研究活動以外にレクリエーションでも下関市を訪れる機会が多く、また自宅玄関を出ると小倉の中心市街地や工場の向こうに下関の山々が間近に見えることもあり、思った以上に一体性の高い地域を形成していることを実感しています。
もちろん、両地域の連携は、行政、民間、あるいは大学など様々な主体によって古くから行われており、例えば両市で同一の条文を持つ「関門景観条例」をそれぞれ制定している等の取り組みも行われています。
地域の一体性の高さと連携の必要性は古くから認識されており、明治・大正の時代から関門地域の合併議論も行われていました。さらに近年、「関門特別市」構想という話題も出てきています。
なお、2007年12月には、両市によって「関門地域の未来を考える研究会」(構成メンバー:下関商工会議所会頭、中国経済連合会副会長、下関市立大学学長、下関市長、北九州商工会議所会頭、九州経済連合会副会長、北九州市立大学学長、北九州市市長)が設置されました。全国的に道州制や地方分権のあり方の活発な議論が行なわれている状況等を踏まえ、両地域の潜在力を十分発揮することが都市間競争を勝ち抜く上でも必要であるとの認識に立ち、今後の関門地域のあり方に係る諸検討がスタートしています。
さて、関門地域を構成する両市は、それぞれ市立大学を有しています。こうした地域も全国的には珍しいことでしょう。そして、この両大学の間には「関門地域共同研究会」が設置されています。この研究会は、1994年に下関市立大学附属産業文化研究所と北九州大学北九州産業社会研究所(当時。現:北九州市立大学都市政策研究所)によって組織されたもので、関門地域の経済・交流発展に資することを目的とし、様々な調査研究活動を行ってきています。研究成果については毎年度『関門地域研究』と題した定期刊行物を刊行するとともに、公開型の成果報告会の開催、また下関市立大学における「関門地域論」の開講などで地域および教育活動へ還元してきました。
私は、本学に着任した2007年4月から、この関門地域共同研究会の運営委員となり、また研究を実際に行う専門委員会の幹事を務めました。
2007年度の研究テーマは
『関門特別市』に関する基礎的研究 〜今後の地方分権改革後の関門地域への展望
であり、関門地域の将来ビジョンについて地域(市民、経済界、行政など)で様々な議論を行うに役立てていただくことを目的として研究に取り組み、全4章で構成する『関門地域研究 Vol.17』をまとめました。
私は、第1章「道州制を巡る議論の変遷と今後の論点」(pp.3-61)、および第4章「道州制導入及び特別市移行等が関門地域に与える影響に係る基礎的考察」(pp.87-115)の2論文を単著として執筆しました。 ※成果については、後日Web上で公開予定。
なお、昨年度の研究結果を発表する成果報告会は来る6月に実施予定(詳細は後日お知らせします)であり、また下関市立大学の「関門地域論」は8月にオムニバス形式の集中講義で開講され、私も非常勤講師として参加して研究結果をもとに講義を行うこととなっています。
私は今年度も関門地域共同研究に関わっていくことになりますが、関門地域の発展(学術的な発展のみならず、地域全体の発展)につながるような取り組みを行っていくことができれば、と考えています。
道州制について考える(その2)
先日、中国地方のある県主催の「道州制シンポジウム」を拝聴してきました。
基調講演・パネルディスカッションで計5名の有識者の方のお話を聞くことができ、「なるほど、そうか」と納得する点や、「はたしてそうなのだろうか」という疑問点など、色々と改めて考えるきっかけをいただき、大変有意義でした。
さて、パネルディスカッションの中で、あるパネラーから、「小さくて筋肉質の道州を目指す」とのご発言がありました。もっともな事だと思います。また、別のパネラーから「道州制の大きなメリットは、“選択と集中”を行いやすい点」旨のご発言がありました。この趣旨もわかります。
ここで考えなくてはならないのは、「道州政府が“選択と集中”を行うには、(その施策分野において)市町村や関係者、そして住民にその方針を受け入れてもらう“強靱な筋肉”が必要である」という点だと思います。“選択と集中”にあたっては、“選択されない施策”“集中されない地域”などが出てくることが必然です。
私も施策分野を絞った上で相当程度の“選択と集中”が必要であると考えています。しかし、当然のことながら、様々な不満や問題が発生することも必然ですので、それについて市町村、住民の理解を得るためには、道州政府もかなりの工夫が必要でしょう。
もちろん、多くの施策の権限は市町村に移譲されるべきで、道州に残された権限について上記のような事項が発生する形とすべきであり、そういう点からは、まさしく「小さくて筋肉質の道州」が必要、ということでしょう。ただ、その実現には、相当の苦労が伴いそうです。
一方、「小さくて筋肉質の道州」となった場合、分野によっては、道州間の施策の違いが大きく生じることも考えられます。むしろ大きく生じなくては、道州制の効果はない、とさえ言えるかもしれません。そうした場合、道州境付近の市町村にとっては、道州境を跨いだ一体的な地域づくりに影響が出る可能性もあります。この点については、昨年9月の日本計画行政学会全国大会において、私も研究報告を行いました( 『道州制導入後の「道州境地域」における基礎的自治体間の連携課題等に関する研究』 )。
また、道州と政令指定都市との関係など、大都市制度のあり方についても重要な論点です。既に大阪市、名古屋市などでは詳細な検討が行われていますし、指定都市市長会からも提言が行われています。北九州市でもこうした点についての検討が始まっています。「道州の筋力」については、特に政令指定都市としては気になるところです。
強靱でしなやかな筋力を持ったコンパクトな体型づくりに向けては、まだまだエクササイズが必要な感じです。急ぎすぎてはいけませんが、しかしダラダラと続けても意味がありませんので、効果的な方策について皆で考えていくことが必要でしょう。
南九州市誕生
日付が変わって明日(このコラムの作成の1時間後)、2007年12月1日、鹿児島県に南九州市が誕生します。
我が北九州市の名称上の相棒(?)ですね。
合併は、揖宿郡頴娃(えい)町、川辺郡知覧(ちらん)町、川辺(かわなべ)町の3町による新設合併で、人口は4万人強。この地域は、旧合併特例法下でも他市町村も交えて様々な動向があったようですが、結局、合併新法下において3町での合併となりました。
私はこれまで、市町村合併に関する調査研究に長年関わってきました。最初に取り組んだのが1998年度(対象は東北地方の、あるエリアでした。)ですから、かれこれ10年間になります。大都市部から半島地域、そして離島まで、様々な地域の合併、そして様々な立場から合併に携わり、合併の意義やその難しさなど、色々と勉強させていただいてきました。
言うまでもなく、合併は「目的」ではなく、新しい地域づくりを行い、新しい地域経営の仕組みを作り上げていくための一つの「手段」です。合併するだけで何か自動的に改善されるかと言うと、そんなものはあまり無いでしょう。合併後の行政運営、まちづくりこそが重要です。また、行政サービスや住民負担、各種団体への補助等についても、住民・団体と行政が各種状況を冷静に判断して、互いに支え合う観点から、適正なあり方や水準、サービスの提供方法等を決めていくことも必要です。
南九州市においても、古き良きものを各地区で残しつつ、市民と行政、また地域に関わる様々な人々が一緒になって新しいまちづくりを進め、合併効果をできるだけ多く発揮してほしいものです。
かつて、ある調査研究で南九州市となる3町(それ以外の市町村も含めてですが。)の様々なデータを整理したことがあります。当時のことを思い出しつつ、今晩は新市・南九州市にエールを送りたいと思います。
北九州市民の通勤地
都市圏の構造や、地域の結びつき等を分析する際、「通勤圏」という概念がよく用いられることは言うまでもないことでしょう。この通勤圏は、国勢調査の常住地による従業・通学地(市区町村別)の表をもとに作成した「通勤率」を指標として用いることが一般的です。
私は以前、いくつもの県で「市町村合併の組み合わせパターン」を検討する際にこの指標は多用したため、個人的には大変なじみのある概念です。
平成17年国勢調査結果をもとに、北九州市内及び他市町村への通勤状況を行政区別に見ると、表1のようになります。
表1 北九州市の各区別の通勤率の状況 【他市町村も含む上位5市町村(北九州市全体での順位)】
勤務先
住まい
|
最多
|
2番目
|
4番目
|
3番目
|
5番目
|
|
※就業者数
(人)
|
北九州市
|
福岡市
|
直方市
|
苅田町
|
下関市
|
その他
|
北九州市(計)
|
89.9%
|
1.9%
|
0.9%
|
1.1%
|
0.8%
|
5.3%
|
436,842
|
|
門司区
|
92.2%
|
1.7%
|
0.1%
|
0.9%
|
3.0%
|
2.1%
|
47,392
|
|
若松区
|
90.0%
|
1.7%
|
0.4%
|
0.3%
|
0.2%
|
7.3%
|
38,590
|
|
戸畑区
|
94.3%
|
1.6%
|
0.2%
|
0.6%
|
0.5%
|
2.7%
|
28,304
|
|
小倉北区
|
94.0%
|
1.8%
|
0.2%
|
0.8%
|
0.9%
|
2.4%
|
80,944
|
|
小倉南区
|
90.2%
|
1.7%
|
0.2%
|
3.4%
|
0.7%
|
3.9%
|
96,332
|
|
八幡東区
|
93.7%
|
1.9%
|
0.4%
|
0.5%
|
0.4%
|
3.1%
|
32,520
|
|
八幡西区
|
83.6%
|
2.5%
|
2.7%
|
0.2%
|
0.3%
|
10.7%
|
112,760
|
※総務省「平成17年国勢調査従業地・通学地集計結果その1」福岡県第2表より、南作成
※ここでの従業者は、15歳以上としている。以下同様。 ※ここでの通勤率=各市町村、行政区別の従業者数/常住地の就業者数
北九州市全体では、89.9%が市内で通勤しており、残りの約10%のうち最多の1.9%が福岡市への通勤、海峡を挟んだ隣県の下関市へも0.8%が通勤しています。この自市内通勤率89.9%というのは、大都市圏以外の主な政令指定都市と比較すると、ほぼ同程度となっています(表2)。
この数値を高いとみるか低いと見るかは様々ですが、かつて製造業や業務機能の集積が高度に進んでいた時期があるイメージが強い市民には、「寂しい数値」と映るでしょう。一方で、全国の皆さんの中には「へえ、意外に高い値だね。頑張ってるね。」と見る向きもあると思います。
表2 大都市圏以外の主な政令指定都市における、自市内通勤率
|
就業者
(人)
|
自市内で
従業(人)
|
自市内
通勤率
|
札幌市
|
840,632
|
784,697
|
93.3%
|
仙台市
|
463,466
|
416,196
|
89.8%
|
広島市
|
563,701
|
505,725
|
89.7%
|
福岡市
|
648,832
|
582,218
|
89.7%
|
北九州市
|
436,842
|
392,847
|
89.9%
|
※総務省「平成17年国勢調査従業地・通学地集計結果その1」各県第2表より、南作成
その他、表1において、気になる値に色をつけてみました。福岡市への通勤率は、地理的に福岡市に近く郊外型の住宅地開発も進んでいる八幡西区が最も高いことはイメージどおりですが、他6区がほぼ同じ比率なのは意外感があります。最も遠い門司区や、JR鹿児島本線沿線ではない小倉南区も低くなっていません。これは、JR、西鉄高速バスの高い利便性が大きな要素であり、また、かつて門司や小倉に拠点があった事業所(官民双方)へ通っておられた方が、福岡市へ事業所が移転した後もお住まいになられている、という要因もあるのではないでしょうか。
その他、直方市、苅田町、下関市へは、それぞれ近接する各区から多くの人が通勤しています。若松区や八幡西区は、この表には記載していない遠賀郡・中間市などへの通勤者も多いため、「その他」の値が高くなっています。
さて、次に、北九州市内の各行政区別に通勤率を見てみました(表3)。
表3 北九州市の各区別の通勤率の状況 【市内詳細】
勤務先
住まい
|
北九州市
|
|
|
|
|
|
|
|
(計)
|
門司区
|
若松区
|
戸畑区
|
小倉北区
|
小倉南区
|
八幡東区
|
八幡西区
|
北九州市(計)
|
89.9%
|
9.1%
|
7.5%
|
7.2%
|
26.9%
|
14.4%
|
6.6%
|
18.2%
|
|
門司区
|
92.2%
|
61.5%
|
0.9%
|
1.9%
|
19.6%
|
5.3%
|
1.2%
|
1.7%
|
|
若松区
|
90.0%
|
1.0%
|
56.5%
|
5.9%
|
9.3%
|
1.4%
|
2.9%
|
13.0%
|
|
戸畑区
|
94.3%
|
2.5%
|
4.7%
|
49.0%
|
23.1%
|
3.5%
|
6.5%
|
5.1%
|
|
小倉北区
|
94.0%
|
3.7%
|
1.4%
|
4.8%
|
70.8%
|
7.4%
|
2.8%
|
3.0%
|
|
小倉南区
|
90.2%
|
5.1%
|
0.9%
|
2.4%
|
26.2%
|
51.6%
|
1.7%
|
2.3%
|
|
八幡東区
|
93.7%
|
1.7%
|
2.7%
|
10.1%
|
19.9%
|
3.7%
|
45.3%
|
10.3%
|
|
八幡西区
|
83.6%
|
0.9%
|
5.7%
|
4.3%
|
8.2%
|
1.6%
|
5.8%
|
57.1%
|
※総務省「平成17年国勢調査従業地・通学地集計結果その1」福岡県第2表より、南作成
※上表の比率は、表1と同じく、各区内の全就業者に対する比率
戸畑区、八幡東区においては、自区内で通勤する市民が50%を下回っているなど、市内においては行政区界を越えて通勤圏が拡がっています。また、数字を見る前に私がイメージしていたよりも、商業・業務機能の中心的存在である小倉北区への集中が、さほど高くありませんでした。市内全体で見ると、4人に1人(26.9%)が小倉北区で働いている程度です。
これらのことは、(インフラ整備等が進んで)市内である程度高い移動性を保ちつつ、(5市合併後40年以上を経て)多核性を程良く維持していることを表す一断面でしょう。もちろん、小倉北区以外に位置する製造業の事業所における従業者数の多さも影響しているはずですが。
このように通勤に関する統計からは、表面的にも色々なことが見えてきて面白いのですが、通勤に限らず、統計を分析する際は、経年的な変化(当然ではありますが…)や数字の裏に隠された様々なことを分析したり、仮説を立てて検証したりすることも必要です。それを行うことは大変面白いのですが、なかなか踏み込みきれず表面的な考察に止まってしまうこともあり、私も注意したいところです。
北九州からの“日帰り出張”考
(その2 〜ビジネスの利便性大。福岡空港との機能分担は・・・)
コラムNo.2の続きです。
まず、No.2の結果のうち、滞在可能時間について地図でまとめてみました。
※結果はいずれも南調べ
※元データはこちら
当然のことではありますが、本州については、東海道・山陽新幹線沿線、羽田空港周辺、及び羽田経由で乗車する東北・上越新幹線沿線などのエリアにおいて、滞在可能時間は長くなります。四国については短く、九州内は長時間滞在が可能です。
飛行機利用の有無の観点から見ると、富山・石川、長野、静岡から東は飛行機利用、以西は鉄道利用が中心となりますが、西日本においても松江、松山、宮崎については、福岡空港を利用した方が滞在可能時間は長くなります(松江は、行き帰りで飛行機利用、新幹線(岡山乗換)利用を使い分けることで長時間化可能)。
ここで着目すべきは、首都圏と京阪神圏で、同程度のビジネス(レジャー)稼働時間が確保できる、という点でしょう。中京圏がやや遠い存在(北九州−小牧空港線は今春で運休)ではありますが、経済、文化拠点である大都市圏へのアクセスが確保されていることは、北九州で仕事をしていく上で、心強いものがあります。
一方で、山陰、四国は「近くて遠い」存在です。双方とも魅力的な土地ではありますが、北部九州との間では人的移動の需要もさほど多くないことが想定されるため、致し方ないところでしょう。先日(10/10)、松山と北九州(門司港)を3時間弱で結んでいた高速船が2008年1月に廃止されることが決定しました。一方で、中国地方、四国地方では高速道路整備が進んでおり、以前と比較すると自動車による移動時間は大幅に短縮、かつ定時性も高まっていると思われます。高速交通機関によるダイレクトな移動はできなくても、交流の下地は十分整っていると言えるでしょう。
−−−
さて、このように、本地域からの日帰り出張を考えるにあたっては北九州空港の存在は非常に重要ですが、その北九州空港を巡っては、現在もいくつか課題が挙げられています。その大きなものの一つが、「福岡空港との機能分担論」です。福岡空港は、ご存じのとおり福岡市中心部に位置する、利用者にとって大変便利な空港です。現在、福岡空港調査連絡調整会議が九州地方整備局、大阪航空局、福岡県、福岡市によって設置され、福岡空港の課題と解決方策等について検討しています。過密する福岡空港の利用へ対応するため、滑走路の増設、新空港の建設と並び、北九州空港など近隣空港との連携も俎上にのぼっていたのですが、本年9月、この会議において空港連携については否定的な判断が示されたとのことです。北九州市ではこの判断に対する反対の声も出ている模様です。
これについては、歴史的背景があり、また北九州空港アクセス整備などとも関連して様々な意見が示されているところではありますが、私個人としては、その妥当性等について述べるだけの勉強が現時点では不足しております。そのため、機会があれば後日改めて私見をまとめてみたいと考えておりますが、一つ感じることとしては、空港問題に限らず「近い者同士の連携は、ともすると限られた牌の奪い合いになって難しく、互いに消耗してしまう。遠い者との連携の方が有効に機能することもある。」ということです。例えば首都圏や近畿圏などにおいても都市間連携の必要性、重要性が唱えられて久しいですが、うまくいく分野等はあるものの、多くの分野等においては実効性の高いものにはなっていないと感じます。
福岡と北九州も、空港以外の面では、既に様々な連携が進められ(福北連携)、成果を上げているものもあります。都市間の連携をできるだけ進めつつ、空港の機能分担については、それに伴う財政負担やまちづくりへの効果なども今一度冷静に分析し、国、県、福岡市に対して説得力を持った考えを示していくことが、北九州(役所や議会にとどまらず、地域の様々な主体にとって。)に望まれることでしょう。もちろん、北九州空港単体としての需要拡大方策も、国と地域が一体となった取組が引き続き必要です。
「出張」議論から脱線してしまいましたが、いずれにせよ、都市間連携については、私の最も関心のある分野でもあり、その必要性を強く感じる事項でもありますので、これからさらに研究し、有効な提案等を行っていきたいと考えています。
明日10/17は、朝10時から千葉県内で会議です。その後、都内で数カ所回り、終わりは20時まで千代田区内の大学で開催される学会に出席します。もちろん、北九州空港を使っての日帰り出張です。北九州空港と、それを支える人々に感謝。
北九州からの“日帰り出張”考
(その1 〜最も滞在可能時間が短いのは山形の7時間強)
北九州市には、24時間空港の北九州空港、また、新幹線の小倉駅があります。さらには、国内外に多数の路線を持つ福岡空港へ1時間も要さずアクセスすることができます。
北九州空港と羽田空港を結ぶ便は、地元航空会社のスターフライヤー社が、北九州始発5:30(羽田到着7:00)、羽田空港最終発23:20(北九州到着25:00)で、一日11往復も運行しています(時刻、便数は2007年10月1日時点)。また、他に日本航空グループが羽田便4往復、那覇便1往復を運行しています。
言うまでもなく、羽田空港からは、飛行機乗り継ぎ、あるいは新幹線等の利用により、東日本を中心とした各地への移動が容易です。
こうした条件にある北九州は、「日帰り出張で日本全国に行きやすい」地域と言えるだけの条件が整っていると感じます。
そこで、2007年10月1日時点において、北九州市から、全国の都道府県庁所在地に日帰り出張(翌日未明に帰着の場合含む。)する場合、何時開始(あるいは終了)の会議であれば出席できるか、また、当該地での滞在可能時間(空港等からの移動時間含む)は何時間かについて、時刻表をもとに算出してみました。
都道府県庁所在地別の詳細結果一覧はこちら。
結果を整理すると、次のようになります。いずれも、“北九州から出かける場合”の視点です。
■午前10時30分からの会議(都道府県庁での会議)に出席できない都道府県庁所在地
青森、盛岡、山形、福井、津、徳島
※若干遅れる可能性あり: 札幌、仙台、長野、岐阜、高知
■午後1時からの会議(同上)に出席できない都道府県庁所在地
該当なし
■午後5時30分までの会議(同上)に出席できない都道府県庁所在地
該当なし
■当該地に10時間以上滞在可能(空港等からの移動時間含む)
札幌、仙台、秋田、福島、水戸、宇都宮、前橋、さいたま、千葉、東京、横浜、金沢、静岡、名古屋、
大津、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、高松、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島
(29都道府県庁所在地)
■滞在可能時間の「長・短」上位5市 (都道府県庁所在地) ※詳細結果はこちら
長時間 短時間
1
|
福岡
|
17時間53分
|
|
1
|
山形
|
7時間41分
|
2
|
東京
|
16時間20分
|
|
2
|
福井
|
8時間18分
|
3
|
佐賀
|
16時間07分
|
|
3
|
津
|
8時間28分
|
4
|
広島
|
15時間42分
|
|
4
|
徳島
|
8時間34分
|
5
|
横浜
|
14時間33分
|
|
5
|
盛岡
|
8時間41分
|
※結果はいずれも南調べ
この結果を見ると、「北九州からの日帰り出張は、かなり便利」ということに改めて気がつきます。地方都市でありながら、全国の都道府県庁で開催される午前中(10:30開始と仮定)の会議に出席できないケースが6市のみであり、午後の会議は全都道府県庁において最後まで出席できると見込まれます。
滞在可能時間を見ると、近隣県のほか、東京、横浜など首都圏においても半日以上の滞在が可能であり、これはまさに24時間空港効果と言えるでしょう。
一方、滞在可能時間が最も短いのは山形ですが、それでも7時間あまりは仕事ができます。それに次いで短い福井、津は新幹線・空港がともに無いため、滞在時間が短くならざるをえないと言えるでしょう。
なお、もちろん、上記は都道府県庁所在地の最寄り空港・主要駅を対象としているので、それ以外の地域においては、日帰り出張が実質的に不可能な地域も数多くあります。
また、結果詳細を見ると、「近くて遠い」「遠くて近い」地域の存在、福岡空港があることによる経路の多様化、あるいは、北九州空港始発便(5:30発)に搭乗するための交通アクセスの問題など、色々と考えるべき点が出てきます。それらについては、また改めて述べたいと思います。
道州制について考える(その1)
近年、道州制に関連するテーマを扱った研究を行っています(きっかけとなったのは、2000年に公益企業A社から受託した行財政制度に係る研究でした。)。
道州制に関しては、非常に研究すべきテーマが広く、関心も尽きないのですが、体系的・網羅的な研究が難しい題材でもあります。
最近着目しているのは、以下の2つのテーマです。
■道州制によって生じる課題(例:道州境地域の課題など)を抽出し、導入時にその課題発生
を抑制(軽減する)ための施策の検討
■道州制、あるいは地方分権に対する、一般国民の関心の高まりが進みづらい理由の整理
(→ 国民が主体的に地方分権について考えやすくなる方策の検討)
これらは制度を巡る根幹的なテーマではありませんが、根幹に関わる議論と平行して、こうした多様な研究・検討が行われ、知見が集められることにより、よりよい制度につながるのではないかと考えています。
うち、後者について、最大の要因としては「現時点では制度の詳細はもちろん、骨格も決まっていないため、議論ができない」ということが挙げられるでしょう。しかし、我が国においては、よく「そんな制度が(国会等で審議され、)実施されるとは知らなかった」といった意見を掲載した報道等を頻繁に目にします。
一方で、いまや国(行政や立法)において議論が相当程度煮詰められた段階、あるいは実施段階で「マスコミ等を通じて国民が“初めて知る”」という時代ではないと思います。まして、地方分権、道州制は、「地方、そして地域社会を構成する国民一人ひとりが、自ら責任を持って決め、行動できることを大幅に増やす」ことです。国において制度の詳細が決まっていない今こそ、様々なところで議論すべきものでしょう。
もちろん、ここ数年、国や地方六団体をはじめとする行政、研究者、それから経済団体、その他一部の任意団体等においては、かなり議論が行われ、積極的な情報発信も行われています。インターネット上でも、ホームページや掲示板などで道州制を扱うものも多く見られます。多くの国民も、最近、道州制や地方分権が議論されている、ということはご存じでしょう。
そこで、それをもう一歩進め、制度設計に向けて様々な意見を国民自らが発していきやすい環境をつくり、そしてそこから有益な制度設計が行われることに、微力ながら貢献できないかと考えています。
なお、蛇足ですが「道州制に賛成ですか、反対ですか」と尋ねられることがありますが、その答えには、やや窮します。なぜなら「賛成できるタイプ、できないタイプの両方の道州制が考えられる」ためです。
(今後、道州制については随時書き込んでいきます。)
個人Web Siteの開設にあたって
このたび、個人Web Siteを開設しました。開設の目的を以下に掲げます。
○ 公立大学法人の一教員として、活動状況の透明性を高める。
○ 大学教員は組織の一員でありながらも、「個人の看板」を背負って自由な発想で研究、教育、社会貢献活動等を行うものと考え、自己責任のもとで広く情報発信を行う。
○ 所属している北九州市立大学都市政策研究所の存在を少しでも広くPRする。
以上です。
とは言うものの、大学教員となったのは2007年4月であり、まだ5ヶ月しか経っておりません。民間シンクタンク時代は官公庁からの受託調査研究等に100案件以上(13年間計)関わっており、それなりに様々な知識・経験を積み、また社会に貢献してきたと自負しておりますが、これらは私個人に帰属する研究とは言えず、また大半は学術的な研究でもありません。従って個人(研究者)としての実績はまだまだ不足しており、このWeb
Siteのコンテンツも開設時には不十分なものではありますが、これまでの経験を活かしつつ様々な研究や諸活動を重ね、順次、コンテンツの充実を図っていきたいと考えています。
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